こんにちは、コミュニティマーケティングのコンサルタント・ LunchTrip共同代表・旅コラムニストの松澤亜美です。
出張から帰ってきて1週間、風のように過ぎて行きました。アメリカ3週間から帰る飛行機の中でこれを書きだしてから、やっとアップできます。長くなったけれどどうぞ。
新しい挑戦と自由を求めた人が集まるこの国は、やはり日本のちょっと先をいってることが多い。
(高齢化を除く。高齢化社会については日本が最先端)
ただ、先をいってるというのは、別にいい意味だけじゃなくて、いろんな意味がある。
今回私が改めて感じたのは、現代の特権階級 と、そうでない人々の分断。
そして今後世界の人々の暮らしはどうなって行くんだろうか、未来への期待と不安です。
各国でコミュニティを本気で良くしようとするリーダーたちが一気に集結
今回私が参加したのは、FCLP(Facebook community leadership program)の第一回のミートアップ。
世界中約50カ国から、Facebookを使ってコミュニティをつくり大活躍している150名を一気に招き、3日間のセッションを行いました。
私は3日間フルアテンドではなく、もう一つ別のプロダクトオフサイトにも2日間出ていたので、ダブルヘッダーの日もあってまさに朝7時半から晩10時まで働いてました。
FCLPで選ばれたリーダーたちは、ほんとに世界でこんな人たちばっかりだったら絶対世の中が良くなるんじゃないかと思えるような人ばかり。同じ問題や趣味を持った人たちのためコミュニティを立ち上げ、多くは収入に繋がらなくても情熱で活動を続けて来ていた人ばかり。
その前週に招待いただいたコミュニティマーケティングのカンファレンスCMXの出席者は企業のコミュニティ担当が世界中から集結していたけれど、facebookにはまさにマーチンルーサーキングばりのコミュニティーリーダーがたくさん集結していました。
もうね。なんど感動して鳥肌ブーストしすぎて、肌と涙機能がおかしくなったかと思ったよ。3日間で、涙が枯れるんじゃないかと思うくらい。
例えば・・・
- Youth(若者)として招待された、10代後半の男の子。最後の日に、「本当にここに来れたのを感謝してる」と静かで落ち着いた声で話し始めました。なんと、彼の高校では今年スクールシューティング(学校の襲撃)があって、17名の生徒がなくなったとのこと。彼の親友は、4回打たれたそうです。悲しみという言葉では言い表せない悲しみにくれていましたが、これではいけないと立ち上がり、インターネットで声を集めて活動し始めたそうです。
もう、彼が話しているときは会場全体がティッシュを欲していました。今書いてても泣けてくる。
怖かっただろうな。今も怖いだろうな。なのに、こうやって声をあげて名前を出してコミュニティを形成することで、社会を前に動かそうとしている人がいるんです。
- エジプトの女性は、シングルマザーのコミュニティを作りました。エジプトでは、というか多くの途上国で離婚は罪と言われるほど悪いことです。三人の子供を抱え、学費を払うために3つの仕事を掛け持つ日々。でも夫は養育費を何も払わなくてもなんも罰せられない。不平等が過ぎる、と怒った彼女は賛同してくれる数人の友人を入れてfacebook groupを作ります。その状況に怒っていた女性たちが次々と参加して今は45000人のグループに。なんといまは、国会と話したりして、法律を帰る動きまであるそうです。やはりカルチャー的なバッシングが大きく、アンチのグループや投稿もたえないそうですが、うち1000人以上は弁護士もいるそう。夜中に「明日離婚届を出すか悩んでる」と連絡がきたら、朝までに必ず返す、と言っていました。
- 日本からも、発達障害のお子さんを持つ親の会を行っている加藤さんが選ばれました。アメリカだと小さな発達障害はあって当たり前、という考えですが、日本の田舎ではまだまだ差別が残っています。なので、そのお父さんお母さんたちが悩みを言ったり、相談しあったりできる場所をオンライン上で作ったのです。
まだまだ事例があります。
でも言いたいのは、本当にみんな自分が望む社会のために、本気でコミュニティ活動をおこなってるんです。多くの人が、本業とは別で。つまりこの活動によって利益を得ることなく、別でコミュニティを運営してるんです。
私も、お金もらえないのにそんなことをやるなんて意味わからない、とずっと言われながらLunchTrip を10年続けてきました。とはいえ5年前大手メディアに出るようになってからは結構認めてもらえるようになりましたが、年上の人だけではなく同世代からも怪訝な顔で見られることが多かった。
でも私なんかを凌駕するくらいものすごいコミュニティにたくさん出会って。しかもその人達が皆つながり、お互いを認めていて、とにかくインスピレーションを感じまくりでした。
世界中でシングルマザー・LGBT・女性ビジネス・地域支援・若者への教育・貧困層への教育・農家・障害・アートなど、世界中でにたコミュニティを行っている人も多く、その人たちが助け合う約束をしていた。
国とかもう関係ない。
ふと、トランプ大統領や安倍首相がこれを見たらどう思うんだろうと思った。貿易会議とか国連とか、ここでやればいいんじゃないかと思った。
これだけ社会を良くしようとしている人が集まってるのに、なんで社会は分断され、どんどん対立し、極右になって行くんだろう。と思ってしまった。
生活のほとんどが揃うfacebookキャンパス(もはやオフィスではない)
facebookの本社キャンパスは、ディズニーランドみたいな風景。
このinsta-storyを見ていただければわかりますが、通勤のwifiつきシャトルバスが毎日何十本出て通勤経路を網羅してるだけじゃなくて、本は読み放題、ジム三つ、オフィスキャンパス内を移動する専門の Uber的システム、いくつもある専門のレストラン(めちゃ美味しい)お菓子や飲み物は取り放題、美容院あり、ランドリーあり、洗車あり。もちろんアイスクリーム屋さんもある。
当たり前のように無料で、しかもどれもクオリティが高いのです。
食べ物も全部健康志向、グリーン志向、ローカル・オーガニック志向。
Instagram, Messengersなどすべてfbファミリーサービスの本社が集まってるのですが、会う人会う人みんな驚くほどに頭がいいだけではなく本当にいい人で、やる気に満ち溢れ、世界最高峰大学や大学院、そして輝かしいキャリアを重ねて来ています。
こんなに大きくなってもまだベンチャー気質があるのは、やっぱりザッカーバーグ氏始めExecutiveたちの努力かなと思います。
カルチャーは本当にMove fast, GO BOLD or GO HOMEと言われるもので、ミーティングしてこれいいね!となったらとにかく作ってテストする。そのあとまたどうするか考える、というのが机上の空論ではなくて本当に行われてるんです。
そのオフィスキャンパスを見に、世界中から人が見学にきます。
世界から来た人たちに「ここで働きたい」と何度も言われました。
先月シンガポールオフィスに行った時に詳しく書いたけれど、「最高の人材に最高の環境を与えて最高の結果をだす」という考え方の、最たるものだと思いました。
アメリカン・ドリーム<「特権階級の再生産」?
FCLPの他もう一つ参加したプロダクトのオフサイトでは、ほとんどがエンジニア・プロダクトマネージャーの中に、コミュニティの人として混ぜてもらいました。
「人生のターニングポイントを幼少期・ティーネイジャー期・青年期3つ話す」と言うワークショップがあり、そこでわかったのは、アメリカ・中国・インド・その他の出身に限らず、皆家族に愛されて優秀な学校に行って順調なキャリアを歩んでいるということ。私も不自由なく中学から私立に通わせてもらっているのでその一端かもしれないけれど、勿論レベルが違ったよね。
そして冒頭で書いた通り、皆本当に頭が良くて、紳士淑女なのです。攻撃的とか失礼な人、誰もいなかった。礼儀がある。つまり国を変えてもみんな本当に「特権階級」なんです。
アメリカンドリームのようなものがあるんじゃないかなと期待していたけれど、国を問わずほとんどの人がいい家庭・いい学校・いい会社を通してここにきています。
日本でも、公立大学であるはずの東京大学に集まる学生が結局私立からきていて、お金がないと最高峰では学べないと言われていますが、アメリカは教育においてその差が歴然としています。いい大学はほぼ私立で、本当に学費が高い。必然的に、お金持ちしか行けない。
つまり、富が次の富を生んで再生産されてる。もちろん、学歴が絶対ではないし、変わった人たちを受け入れる制度もきちんとあります。現実として私が多くみた事例は「アメリカン・ドリームよりも特権階級コミュニティの再生産」でした。
特権階級コミュニティは、リアルな社会とかけ離れてる
ご存知の通り、facebookのあるベイエリアには、Google, Apple テスラ・モーターズ、オラクル・twitter・Pinterest・slackなどまあ大体のいけてる会社が揃って優秀なエンジニアをあの手この手で引き寄せています。高いお給料や上記のような福利厚生がこの例。
お金を使わなくても良いこのキャンパス内にいたら、もうほとんど生活費がかからないんじゃないかと思うほど。「下界」に出る必要がないんです。私はまあ出張で朝から晩まで仕事してたので、1週間一度もお財布出しませんでした。
一方、下界はどんどん広がっています。
今回、SanFranciscoのWestin Hotelの前では従業員たちが”One job should be enough”「仕事は一つで充分なはずだ」とストライクをしてました(SFのinsta storyに載せた)。
物価が全体的に上がっていながらもテック以外の業界はそこまで上がらないから、仕事を掛持ちする必要があるんです。ホームレスとして目に見える人達以外にも、上がって行く地価・物価とテック業界以外上がらない給料の差に苦しんでいるのです。
これはサンフランシスコ含むベイエリアだけではなくて、ポートランドでもシアトルでも聞かれた言葉でした。
そして、その苦しむ層の目には、極端な右派が輝いて見える。この極端な人ならこの国を今の状況を変えてくれるんじゃないか、と思う。まさに今そのようにして極右派が首相になりそうだと、ブラジルが嘆いていていました。
プラットフォームビジネスとしての矛盾と苦悩
ここに私はすごく自分ごととしての矛盾と苦悩を感じます。
Pinterestもfacebookも、プラットフォームビジネスで働いている人は「良いことをしている人を助けよう」と思っています。少なくとも私のいるコミュニティチームの人たちは本気で。
超優秀なエンジニアたちも、私たちのコミュニティの取り組みに真剣に耳を傾け、どうやったら良い社会を作るためのプラットフォームを作れるか、真剣に考えてました。
また、アメリカだからなのかfacebook社だからなのか、ダイバーシティにも相当気を使っています。「インクルーシブ(包括的)な場作り」にとても拘っており、人種だけではなくて障害の有無やを作るのに本当に一生懸命です。
それに、もちろんテック会社で働いている人が現実社会を知らないというわけではありません。
以前書いたPinterestの女性エヴァリンのように、その二つの社会をくっつけようと取り組む人達もいます。
でも、ここにはもうどうしようもない分断があるんです。
一方はお給料が上がって、果てしない福利厚生を受けられ、一方の普通の人たちは高くなる地下と物価についていけずに貧困層になる。その後方が広がる。
で、どうしたらいいんだろう
行き過ぎた資本主義をどうしたらいいのか。今更社会主義ってわけでもないだろうし、そもそもここまでは日本でまだ起こってないし。私にできることってあるのかしら。
お給料が上がることよりも、社会全体が良くなることを優先するっていうのって結構理想的だけれど現実的じゃないと思う。私だって今回アメリカに行くお金があったら、より旅できて、よりこうやって経験から学んでる。
でもアメリカやブラジルのように格差を広げていく、その先にはより多くのマフィアや銃などの危険があり、ホームレス生活があり、社会全体で見たら心理的安全からかけ離れていく。
自分たちの特権階級コミュニティだけが良くなるだけじゃなくて、もう少しそのコミュニティの幅を広げると、より社会全体の幸せ総量が上がるんじゃないかなと思ったよ。
日本にいるとあまり格差を目の当たりにしないから考えないけれど、アメリカにいるとこういう社会学も考える。私たちはどういう社会を作りたいか?を改めて考えるいい機会になりました。