「日本のアパレルはどうしたら世界の文化とうまく融合して展開していけるのか」と言う事にあります。
アパレル工場のコンサルタントとして海外出張する中、「日本のファッションアパレルの海外展開が遅れてる!いいものなのに。異文化にあわせて出せればもっと受け入れられるんじゃないか?」と考えていました。
いつも私のブログを読んでいただいているKさんがその主旨を感じ取って下さり、下記の素敵なシンポジウムをご紹介してくださいました。Kさん、ありがとう!たまに業界外の友人に、ファッションといえば華やかな業界でしょ?と言われます。
でも日本の繊維ファッション産業は昔と比べた現状を嘆いています。
物心ついたときにはバブル崩壊、中高生を失われた10年で過ごし、入社してすぐに起こったリーマンショック、そして昨年の東北大震災。数十年前の華やかの象徴であったファッション産業は今、喘いでます。みな、どのように舵を取るべきかと必死なのです。
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一般社団法人 日本繊維製品消費科学会会長 島崎恒蔵氏 開会の挨拶 |
2012 年 9 月 7 日(金)共立女子大学にて、一般社団法人 日本繊維製品消費科学会による、消費科学シンポジウム第4回が開催されました。
テーマは「日本のファッション産業・消費生活のあり方を問う––日本の独自性を生かす道を考える––」です。
それでは早速、講演内容に。
記事の都合上、最初の講演3本をパート1に、講演1本と質疑応答を次のエントリーに分けました。
①経済産業省 繊維課長 三浦聡氏
田川氏は、41ページにわたる詳細なデータをテンポよく20分で説明されました。
業界の現状説明では、
•日本の繊維産業構造が欧米と比べてプレーヤーが多いために商品単価が高くなっている事
•アパレル最終製品を数量ベースで見ると9.5割、
•金額ベースで見ると7割が海外輸入であること、またコレクション発表数が極端に少なく、デザイナーもランキングも減少傾向にある事
などを指摘しました。
政府の海外販売開拓支援としては、バイヤー招致や商談会の開催、ものづくり事業者に対する開拓支援、クールジャパンでのコンテンツとしてのファッションの輸出をあげましたが、具体的なお話までは20分では時間不足のようでした。
②繊研新聞社 大阪支社長 藤浦 修一氏
藤浦修一氏 |
「世界における日本ビジネスの優位性」
藤浦氏は、繊維の生産量の推移、国内の小売動向、業界内ランキングや環境変化を客観的なデータとともに述べた後に、日本の繊維ファッション業界が世界で勝ち抜く活路は「技術力/輸出力/異業界間の取組み/ブランド力/総合力」にあると述べました。
技術力については、いわずとしれた機能性素材の他、細•軽•強•薄の追求、複合素材や感性素材が作れる事、品質や生産性の高さ、省エネや環境対応が可能な商品を作る事ができる優位性についてお話されました。
また、全く同じ品質、色などの再現が必要とされるユニフォームも、実は国産である事が多いことを日本の技術ならではであると述べました。
③(株)三陽商会 代表取締役会長 中瀬 雅通氏
「海外展開よりまずは国内。ブランドの熟成を」
中瀬氏は前のお二人とは違い、資料を使わずに豊かな知識をもって三陽商会の歴史を述べ、またグローバル展開についてのご自身の考えを述べられました。
中瀬 雅通氏 |
三陽商会としてのスタートである戦時中の商業からレインコート発売から百貨店、専門店、量販店の三つの形態で販売してきた業態の経緯などをお話されました。
話題はグローバル展開の話へ。
「繊維業界の川上は海外輸出できたが、川下はできていない。90年代までは国内市場ばかり見ており、ある意味楽な戦いをしていたから。」
三陽商会は創業者吉原信之氏の米国でレインコートを売る、という強い意志から他社に先駆けて1981年よりニューヨークに現地法人を設立。米国での生産も行い、1982年に海外販売のピークを迎えました。その後は為替変動が起こり、その記録を塗り替える事はまだないそうです。
「ラベル数を増やしてブランドを育ててこなかったと反省している。今後は時間がかかってもブランド数を減らして熟成させ、国内を充実させる方針をとりたい。ただし、社内として国際化について統一した答えは出ていないのが正直なところだが、商品を見直していきたい」
また、マーケットインプロダクトアウトに関する話もありました。
「市場の声を聞く事に傾倒しすぎると、同質化を生んでしまう。(中略)21世紀は物欲の時代で、心の豊かさを求める時代である。やはりどの時代の“かっこいい“と思うものをセットしてファッションになるので、それを見極めて提案していくプロダクトアウトが大切。」
実は筆者としては、2012年2月に出た三陽商会の中期計画に“海外事業の強化(上海三陽時装の業容拡大)”とあったため、具体的な戦略についてもお聞きしたかったのが本音でした。そのため懇親会中に会長に直接お伺いしました。
「かっこいいものを提供する事は大事。でも、手に届かない程の富裕層マーケットでもなく、かといって身の丈に合いすぎたものを出しても憧れがない。少し手を伸ばせば届きそうなものを、新興国にも出していきたい。」
最後に中瀬氏は、下記のように講演を締めくくりました。
「ファッションアパレルで一番大事なのは世界平和。平和な社会を増やしてく事が、ファッション産業の明るい未来にも繋がる。」