こんにちは。コミュニティコンサルタント 兼 トラベルコラムニスト 兼 NPO法人LunchTrip共同代表の松澤亜美です。今日はコミュニティマーケティング施策について。
東京カレンダーのファン熱量がすごい。
2年前からウェブの盛り上がりはもう説明の必要もない媒体。ウェブだけでなく、このご時世に紙媒体本体の方の売り上げも好調だとという。
何がすごいって、「イライラエンタメ」などと言われながらも、強固なファンがいることだ。雑誌不況、書籍不況の流れはこれからも止まらないであろうこの世の中で、まさに、ウェブと紙がうまく融合しあって、盛り上げてブランドをあげてる。
このブログでは、その記事コンテンツの秀逸さではなく、彼らの「ファンづくりマーケティング」について書いていきます。特に、タイトルに書いたように「港区おじさん」と言うコンテンツを作り、ファン熱量をあげ、コメントが2700を超えている事象に焦点を当ててみます。
私も後から知ったのですが、実は東京カレンダーは親会社がIT会社と言う特殊なメディアです。なので、ただのメディアとしてみるのではなく、アプリのアクティブ率を高める施策としてみると、IT業界の人にも、とても参考になるファンマーケティング施策をしてると思うのです。
まずはウェブ版から新規層のファンを作る
これは私の感覚ですが・・・ほとんどの雑誌メディアが編集部が片手間でSNSやウェブ版の編集をおこなっていた2015年ごろ。大体の雑誌社にとって、「紙媒体こそが本腰を入れるべきもの」であり、雑誌のウェブ版やSNSはあくまでも雑誌を売るためのPRの場と捉えていたようで、ウェブ専門の別コンテンツを作っている媒体は少なかった。
東京カレンダーはすでに本腰を入れてコンテンツを作っていた。 2016年には、「東京女子図鑑」という連載が大ヒット。田舎から出て来た女性が三茶→恵比寿→銀座→豊洲→代々木上原に三茶に住みながら様々な男性に出会って成長していく模様を描いているのだが、私の周りでも新作が出る度にバズが起きていた。
(ちなみに東京女子図鑑は後にAmazon Primeで実写ドラマ化、扶桑社で書籍化されてる。中国でもドラマは大人気で、上海の友人の周りも皆大ファンだと言う。)
ウェブマガジンだけでなく、ソーシャルツールを全方位で生かして東カレワールドを展開
インスタ・youtube・FB・Twというツールそれぞれの特性を生かしてコンテンツを配信。
その中で2017年の夏から作られている「1分港区おじさん」という動画に火がつく。
ちなみにインスタ見たら1日5写真も投稿されてた・・・!多い
イベントの頻度が半端ない
ほとんどの雑誌メディアは、他の企業のタイアップでしかイベントを行わない。よって頻度・優先度は低い。日々の編集・校正で忙しい上、自社イベントはすごく手間もお金もかかるから。
でも、東京カレンダーの自主イベントの頻度といったら。調べて見たら、1年半で19のイベントを開催している様子。それって、ほぼ毎月ですね。すごい!
ちなみに私も、2016年の東カレナイト第2回に一度お呼びいただき、最後の30分だけ参加させてもらったことがある。綺麗な色気のあるエビージョがいっぱいでした。ちなみに、少なくとも当時はすべて社員さんがイベントを運営していましたことに驚いた(今はわかりません)
連載から動画へコンテンツを応用
「港区おじさん」連載は、元はウェブの記事だが、その人気から動画コンテンツへ。東カレアプリ内の動画配信で人気になる。私が知ったのはこの「着席前会計」だけれど、見始めるとどんどんみ始めちゃうから怖い。
コンテンツそのものにファンがついたところで、イベント化!
で、ここからが今月(2018/5月)の話。
港区おじさんの人気を把握して、今度はファンイベントを運営してる。今までの雑誌でも、モデルのファンイベントはあったかもしれないけれど、架空の人物像でのイベントっていうのが面白い。ちなみに「ご出席は一人でどうぞ」と書いてある。出会いのため?
記事リンクはこちら。
このイベント、収容人数は約300名と書いてあるのに、応募が多くて増席どころか日程を増やしてる。すごい。(後日のプレスリリースから、応募総数3,000名超とある)
イベントは5月半ばに土日で開催されたそうだ。
イベント終了後、ファンたちが熱量を共有できる場を作る
イベント直後にはレポート記事、と言うかイベントの準備の様子を掲載。
その記事には、アプリでログインした人だけがコメントできるスペースを開設している。
イベント終了後の1週間以内で2000以上のコメントがついたと言うからすごい。
私は行っていないので当日のコンテンツは知らない。でも、その盛り上がりは、その場にいなくても伝わってくるほど。
参加者が600人なのに、イベント3日後で約2000件のコメント。
次に雑誌のイベントが別の紙媒体(WWD)に取り上げられる.
誌面トップと中に取り上げられる。他メディアに取り上げられるほどに「トレンド」になってることがわかる
→
結果的にアプリのコメントがまだまだ続いて2700に(5/29現在)。
港区おじさんだけじゃなく、イベントスタッフだけじゃなく、社長が褒められてる。すごいなあ。
ポイントをまとめてみる
だいぶ長くなりましたが、ポイントをいくつか書いてみます。太字部分が特にファンを盛り上げるのに貢献しています
・ウェブを別媒体としてクオリティを下げず、本誌の新規開拓とリサーチにつなげている
・本誌・ウェブ媒体・アプリ・イベント・ソーシャルを周遊して、ファンが東カレワールドを四方八方から楽しめるようにしている。書くソーシャルツールで別の角度から楽しめる。
・有名人を使うのではなく、コンテンツ自体を作り続け、ブランド化する
・ファンが盛り上がったタイミングでコンテンツを絞ったイベントをして「可視化」
・イベントではファンの熱量に答えて価格以上のおもてなし
・イベント終了後、熱量をユーザー同士が共有できるコメント欄をすぐに作成
・メディアなのにさらに他社メディアにその盛り上がりを書いてもらったり取材させるこことで、さらに新規獲得をし、会社全体への信用アップにも繋げている
「イライラエンタメが好き」と言う秘密の共有を、オフライン・オンラインでさせる
コミュニティ的に大事なこととして、「秘密の共有」がよく言われます。
冒頭に言われたように、東京カレンダーは「イライラエンタメ」として有名です。男女のいやらしい部分、ずるい部分もたくさん描かれています。たとえ深夜に1時間も港区おじさんの動画を見てしまっても、それを会社で部長に自慢できるようなものではない。少し、後ろめたさえ感じてしまいます。それでも、つい見ちゃうコンテンツなのです。
しかし、その「後ろめたさ」こそが、このコメント欄の盛り上がりに繋がってます。私たちは、なにか自分が持っている「偏った熱量」を共有できる相手と繋がりたいものなのです。その「場」が的確なタイミングであれば、つい書いてしまうのです。
新規獲得するなら広告、じゃなく既存のファンを盛り上げる
新規獲得をするなら、同じだけの予算と労力を広告につぎ込めばいいのに、と言うのが従来の考え方でしょう。でも、この300人x2日間のイベントでファンの熱量を上げることで、結果的にファン一人一人からの生の声、他者メディア、その結果の新規顧客を掴んでいると言えます。
「釣った魚に餌をやらない」のではなく、既存顧客だからこそファンが喜ぶリアルイベントをとことん考え抜いて、行なった結果です。ファンコミュニティを大事にしてるんだあと思います。
東京カレンダーイベントに自分から応募するには、キラキラすぎて難しい私ですが、これからもその手法に期待してます。
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