4人目の講演者
(株)良品計画 代表取締役社長 金井 政明氏。
金井 政明氏 |
「僕たちは無理をしない。今は22カ国で展開しているが、これは世界と争っているのではなくて、競っているのだ。相対価値のような小売業の戦いではなく、我々は絶対価値を手に届く価格で提供している。」
「(日本の国旗をスライドで示し)日本はとても抽象度の高い国。何を表しているのかわからないが、相手に“考える余白”を与える文化を持つ。」
「色々な国で展開していると、勝手に日本を感じてくれる。ここにあるのはMUJIに対するイメージだ。別に私たちは禅を示そうとした訳ではないし、革新的なサービスをしたわけではない。例えば爪切りに爪が飛ばないようなカバーがついていただけで、欧州では革新的。また、MUJIはすごい!と米国のブログで話題になったと聞き何かと思ったら、雨の日に紙袋にカバーをしただけだった。日本人として当たり前の事をしているだけ。 」
「日本は稲作文化で和を重んじるため、主張をあまりしない。でもそれはいいいこと。相手に委ねる余裕デザインは、日本だから生まれた。」
無印良品が生まれた時代とその背景
その渦中、「消費生活のアンチテーゼ」として、セゾングループを率いる堤清二とデザイナー田中一光の提案で始まった。
「最初はロゴさえ付けていなかったが、マネをされるから無印良品とロゴをつけることにした。工数も徹底的に見直した。例えば最終的にキャラクターマークが入っていても生活者には関係がない。形の崩れた椎茸も、生活者にとっては結局切ったりだしをとったりするのだから関係がないから、安く提供する事にした。」
「デザイナー田中一光は、茶の湯と無地を世界に出したいと言った。それは、日本の文化である「引き」の精神、簡素な野中に秘めた知性や感性が誇りに思える価値観を世界に発信すれば、もっと少ない資源で美意識の高い豊かな暮らしが実現できる。」
質疑応答
聞きたかったことを聞いてみました。
Q.今年ヨーロッパにいき、日本とは違うMUJIの高いブランド力を感じた。パリではコンセプトストアの一つとして考えられているし、ミラノでは上品な奥様が「MUJI」の紙バッグを誇り気に抱えていた。
ただこれは、大量消費に疲れているということがあってこそのブランディング。
現在大量消費で経済発展真っ最中の新興国でも、同じようなブランディングで売っているのか。それとも、安くていいものがあるという面をアピールしているのか。
A.「基本的には欧米と同じ。新興国に置いても、消費に疲れる人たちは必ずいる。そのひと達にとってのほっとする空間でありたい。」「逆に、みなが田舎に住み満足した世の中であると、わたしたちのお客様ではなくなってしまうかもしれない」
また、懇親会でも直接、下記の質問を。
Q.パリではアート系でおしゃれな人が集まるマレ地区にお店を置いているのは戦略的なのか?誰が選んだのか?
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取材者としても、一人の生活者としても講演を聴いたけれど、まさかここまでのフィロソフィーが無印良品にあったことを、わたしは今回初めて知りました。
そして、下記の言葉は、わたし自身にもずしんと響くのでありました。
「東京に居ても、生活が貧しいひとってたくさんいるんです。家の中のもの、生活自体が美しくないのです。それって、貧しいと思いませんか」
うーん、深いいいいな、無印良品!