コミュニティコンサルタント・LunchTrip共同代表の松澤亜美です。
今週頭、面白い講演に行ってきました。
ジェイ・トンプト(Jay Tompt)さんという環境ビジネス活動家がイギリスの小さな町トットネスから来日。内容は彼が行う「トランジションタウン」の話。
トランジション・タウン(英語:Transition town)は、トランジション・ネットワークの価値によって支えられた地域グループを作ることで、石油ピークや気候変動、経済的不安定からの回復をめざす、草の根のコミュニティ活動である。
⬆️トットネスの写真 。可愛い田舎町って感じですね
彼が行うのはリエコノミー(Re economy Project)で、日本でいうと地域内循環型経済。そのまま、地域内で回す経済のことです。
ジェイさんによれば、現代は「個人主義的でスケーラブルな資本主義」から、上記のような「新たな経済」に変わっていく転換期(英語で言う”Transition”)だと言います。
「個人主義的でスケーラブルな資本主義」では、全国展開や全世界スーパーが力を持つ。その方が価格が3割ほど安いので、皆そこから買うけども、結局地元にはほとんどのお金が入らない。
外資系企業のホテルがあれば、地元の旅館は流行らない。
大企業の下請け工場のある街だと、その大企業の業績が下がった時に、街全体の景気が止まってしまいます。雇い止めが起こり、他に就職先もなく、飲食店や町の商店街も含めて景気が悪くなってしまう。
外資で働いて来た私としては、外資系企業や日本の大企業を街を排除して、その街だけで全て済ませようとするのは、「鎖国状態」を作ろうとしていて少し危険があると思うけれど、でも地域を盛り上げて、少しでも自分たちで自給自足できるようになっておくのは大事なこと。お金にしても、情報にしても、食べ物にしても、自分で管理していない情報が一番危ないから。
(🔼紐を引っ張りあう時に1箇所を中心にすると、中心が倒れると全てが倒れる。けれど、横の線がたくさんあれば、倒れないですよね、という事例)
そこで今回のジェイさんが紹介したのは、イギリス南部の田舎町トットネスでの事例です。
人口たった8500人の小さな街。嵐が来時にはサプライチェーンが止まってしまった時にはパンもミルクもなくなってしまった。そこで、動き出したのがこのトランジションタウン運動。起業家を作るフォーラムを運営しているそうです。
開始から7年で7箇所開催、31の起業案件を輩出、今では市民の10%が参加。
起業家にたいして「お金で投資するよ」「ビジネスプラン描くの手伝ってあげる」「Twitter投稿してあげる」「ケーキ焼いてあげる」「クリーニング無料にしてあげる」「子供の世話見てあげる」など地域の人たちがみんなでその起業家を応援するようになった。
大企業に皆がぶら下がるのではなくて、みんなが自分ができることをお互い支えあうことができるようになったことができるようになった。とのことでした。
この話で思ったことをいくつか。
・日本の地方にある企業城下町でもこれは適応できるんだろうか?という疑問。ジェイさんに質問してみると、別に教育レベルや若い人が多いことだけが条件じゃない、と言います。それよりも「言い出せない雰囲気」や「その地域での風習」を壊していくことが大きいと。だから、アメリカ人である彼がイギリスの田舎に入り、わざとアホ役になって色々ストレートに話すことに意味があったとのことです。
・最近は、「脱成長」「グローバル化の反発」「エコロジカル」「脱中央集権」という言葉をよく聞く。資本主義にある意味限界がきているのは誰もが感じていて、その次を探そうとしてる
この前私がシリコンバレーで感じたジレンマの投稿そのもので、矛盾の部分に地方の人が大きく共感しているように思います。
・また、ローカル文脈の人々と、グローバル文脈の人々の分断も感じます。前者は、例えばGreenzとかインフラの先進的な人とかに会うと結構そういう話になる。後者は、ITやファンドマネージャーの人たちのマインド。スケールしやすい業種かどうかにも関わりそうです。
そもそも、スケールって言葉自体がもしかしたらもう古くなるのかもしれない。
GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)への風当たりがより強くなっている昨今ですが、もうこのような会社のように「グローバル」や「スケーラビリティ」をとにかく目指すのは、もしかしたら前時代的なのかもしれない。
政治も金融も、そして人々の経済も、脱中央集権をして、なるべく個人がオーナーシップを持って進められるように、一歩ずつ進めていけたらいいなと思います。
ただ、その時に現在パワーを持っているものを全て否定していたら、おそらくそれはただの鎖国状態になり、日本がまた遅れてしまう一つの原因となってしまうと思うんです。
私はありがたいことに地方公演のお話をよくいただき(4月宮崎、9月富山など)、その一環で地域でもコミュニティを活性させたいというお話もよく聞きます。
日本は高齢化社会の超先進国。もうこの特性を生かして、他の国が高齢化した時にそれを事例として見せていくしかないんです。
企業城下町で全然元気がない町を、コミュニティを中心とした経済で盛り上げることができたら。日本でも神奈川県藤野とか千葉県いすみとか、いくつか既にいい事例があるのだから、全然夢じゃないと思います。
面白い話をありがとうございました!Thanks Mr.Jay!