フリーランスになり、時間の都合がつけやすくなったため、出生地であり、祖母の住む鎌倉によりよく帰る様にしています。
金曜は早めにミーティングを終わらせ、午後は海辺が覗けるwifiカフェから作業すればいいことに気づいてしまったのよ。
(今年の夏は寒かったからか、もう9月頭で海の家は撤退。少し寂しいね。)
さて、モロッコやイタリア旅もまだブログも途中なのに、今おばあちゃんのお話を書き留めておきたい。
おばあちゃん、最近よく私を居酒屋に誘う。今回は私は行かなかったけれど、いつも誘われる。
というのも、「外で飲むこと」自体がおばあちゃんがとってここ数年で学んだ、新しい風習だからだそうだ。
おばあちゃんによれば、昔は女の人が夜暗くなるまで外にいること自体が、なかった。だから暗くなってから帰宅することを、今でもおばあちゃんは「不良な帰宅」と呼ぶ。(私なんて毎日不良な帰宅だ)
そして、お酒は男の人が飲むものだった。昭和時代、旦那や旦那の先輩後輩がお酒をのみ、注ぐことに対して疑問を持ったこともなければ、別に飲みたいと思ったこともないし、「お酒は男性のもの」だった。もちろん私は、たまに小さなコップいっぱいのビールを飲むおばあちゃんの姿はなんども見ているけれど、彼女に言わせれば「それは最近」という。
外で飲むなんて、どう考えてももってのほか。現在80代半ばのおばあちゃんが子育て中、一度も夕飯の時間に外にいたことはない。おばあちゃんの娘世代(私の母世代)は、子供の部活の父母会で飲むというのを聞いて、カルチャーショックだったという。10年ほど前から、居酒屋で女性用のプランがあると聞いた時も、とても驚いたと。
それほどに、女性とお酒は遠い存在だったと言うこと。
鎌倉にはまあまあ裕福な未亡人がたくさんいて、おばあちゃんはその中でも明るくて、愚痴を言わないので、自動的に愚痴を聞く側になるという。「旦那はこんなに言葉の暴力がひどかった」「うちの息子はいつまでもパラサイトシングル」などの愚痴を言う人に、おばあちゃんはちゃんと聞いて、せっかくだから今を楽しみなさい、と言うんだって。そうすると、みんな喜んで帰ったり電話を切って、元気になったというらしい。
そして、その未亡人たちにおばあちゃんが見せている新たな世界が、この「居酒屋」である。笑
と言ってもまあ安心してください。おばあちゃんたち、開店と同時に16時に行くらしいから。はやっ
しかも、だいたい孫の誰かが一度連れて言ったお店に、何回も何回も繰り返して行く。で、孫たちよりも若い店員さんたちと、顔馴染みになって仲良くなる。で、いろんな話ができて楽しいらしい。
おばあちゃんには私たち孫が何人もいるけれど、裕福な未亡人の奥様たちは必ずしも孫がいるわけではないので(少子化だね)、若い彼ら・彼女たちとの会話が楽しいんだろうな。
だから今まで2店舗しか行っていない。私からしたら本当に普通のお店だ。安いわけではない(2杯飲んで食べて一人4000-5000円)、だから普通に美味しい。サービスも普通に良いけれど、内装がイケてるとか、味が忘れられないほどとか、特別な何かがあるわけでもない。おまけに鎌倉だけにあるわけではない、チェーン店だ(もちろんおばあちゃんはそれを知らない)。
最近、おばあちゃんに誘われているのが、横浜のニューグランドホテルのバー。多分これだ。目をキラキラさせて言っていた。「私、ずっと憧れてたの」と。
おじいちゃんがなくなった時あんなに毎日泣いていたのに、今こうやってときめきが伝わってくるおばあちゃん。本当にこういう人になりたい。
しかし、正直言うと私はそこまでときめいていない。なんとなく「多分レトロなバーだろうな」なんて思っている。勿論、おばあちゃんと一緒に行くこと自体は価値があるけれど、私自身にとっては新しい経験ではないな、と無意識に生意気に判断してる。
というのも、現代に生きる私はとうの昔にお酒を外で飲む楽しさを知ってるから。20歳になってすぐにクラブでオールというのをしたし、社会人になって勿論ホテルのバーも経験した。(今でも、新宿のパークハイアットのNYグリルに初めていった時の感動は忘れないけど。)
おばあちゃんには、なんか悪い気がしてそれを言えない。私は、将来のオトナの楽しみを自分で早く経験しすぎたのかもしれないとさえ、思った。
(写真:中目黒のどこかのバーと、シンガポールのHotel G)
でも、私がおばあちゃんになった時。もしかしたら私は「宇宙人と会えるバーに行ったことないから行ってみたいの」と言って、孫娘が同じ様に感じるかもしれない。孫娘は、「そんなの大昔から普通なのに・・・私はすでに宇宙に行ってるっていうのに・・・今更何が珍しいんだろう。」と思うかもしれない。
だからその時に、それでも「私にとってこれ新しいから」と堂々と言えればいいか。その時楽しいことを、ちゃんと楽しめばいいか。ときめけば、いいのか。
半世紀ちょっと離れた私とおばあちゃんでこんなに時代が違うんだから、変化の加速するこの世の中、私の孫娘の時には何が起こっているかわからない。
絶対、おばあちゃんみたいに笑顔で楽しい人になるぞ。
さ、ニューグランドホテル、いつ行こうかな。メールしよ。