プロローグ
この話は、特に日本に興味のなかったアメリカ人60代の夫婦が、どのようにして日本食をだんだん取り入れていくかのストーリーです。
登場人物
・義父母:シアトル郊外に住むアメリカ人60代の夫婦。
・私:異国料理から世界を学ぶLunchTripを12年主宰。小さい頃から家庭内で異国料理を食べて育ちました。が、基本はやっぱり和食です。
・夫:日本食、納豆とアオサ以外はなんでもいける、食べることが大好きなアメリカ人です。日本食だけじゃなくて韓国料理もタイ料理もなんでも試す。
2018年の醤油・ヌクマム ショック事件
初めて二年前に夫の実家を訪れた時。優しい義母は冷蔵庫からヌクマムを出して「これって日本のものかな?」と聞いた。
和食は世界的なもの、と思っていた私にはショックでした。(念の為:ヌクマムは、タイやベトナムの魚醤(ぎょしょう)。魚を発酵させた、現地でいう醤油くらい毎日使う食材です。)
この初めての義父母の家訪問は、とても良い思い出です。ああこのご家族となら仲良くやっていけるなと自信になりました。
でもこの醤油ヌクマムショック事件で、義父母にとっては日本はまだその時点では特別な国ではなく、たまたま息子が住んでる国、くらいの認識だったことを痛感しました。
2019年の夫婦、結婚式参列のために初来日
(🖕京都にて)
初めての日本どころか、初めてのアジア。夫の家族は同じ大陸のメキシコ・カナダくらいしか海外旅行はしないので、かなりの大冒険だったと思います。
食に関しても、あまり義母は冒険しない方だと聞いていたけれど、まさかの抹茶さえ知らなかった。抹茶って、もうワールドワイドなものかと思っていた私は驚き。
お刺身NG. 屋台などの食べ物もNG. いくらや明太子などの魚卵系ももちろんNG。美 味しいのに〜試してみたらいいのに〜と私は思っていました。
本格的な和食を楽しむというよりは、鉄板焼き、お好み焼き、ラーメン、和風パスタ、抹茶ラテ、カレーライスなど現代人の普段食べる和食を。とはいえここでうどん・そばなども初体験でしたが、フォークで美味しいと食べてくれました。
でも、とにかくこの初めての旅は、結婚式もあったし、日本を好きになって欲しい、という気持ち強かったので、推しすぎないことを学びました。
👆最初の食事は私たち夫婦も大好きな恵比寿のKINTANへ。生卵には驚いていたし、目の前で自分で焼くスタイルの焼肉にも驚いていました。同世代の外国人の友達にはあまり驚かれることもなかったので、これが驚きの対象になるのね、ということにこちらも驚きました。
👆すぐ気に入ってくれたのはお蕎麦・天ぷら。
👆こういう屋台フードは大抵拒否されました。私と夫は大好きな、だし巻き玉子も拒否された時はショック。
衛生的に怖いというよりは、なんか見たことなさすぎて怖いんでしょうね。
👆結局京都でウケが良かったのは、二年坂の古民家スタバでの抹茶ラテとKOE kyotoのドーナッツという、、、笑。あとは鴨そばと、京都駅のあるsaredo かふぇの和風パスタ!
日本人が予想するものと違いすぎて、面白いでしょ。
そして今回の2020年滞在
ホテルやAirbnbに泊まっていない時は、夫の実家に居候生活させてもらっています。と言っても、お部屋は「離れ」のようになっていてとても広く、部屋にキッチンやお風呂、トイレなどがついているので毎食義父母と一緒というわけではありません。コロナ対策もあるので、一緒に食事をしたりしなかったりしてます。
でも正直、食材買い出しはコロナ対策を兼ねて基本義母が一人で行くので(スーパー朝早く高齢者時間に行ってるので私は入れない)、アメリカン食材にだんだん私は飽きてきてました。←偉そうでごめんなさい。
そのタイミングで私が体調を壊したため、夫が義母になんでも良いから日本食っぽいものを買ってきてとお願いしたようです。
私も、義父母が食べられそうな日本食をゆっくりと探索し、肉じゃが、カレー、ラーメン、うどん、天ぷら、餃子などを一緒に作り、楽しむところまでを達成!
👆肉じゃがは、給食のような鍋に作りましたがすぐ完食された。良かった。実は海外で肉じゃがは最初の日本家庭食導入として鉄板なのだよ(長い人生の経験より)
👆カレーも最初控えめな量でよそいましたが好評で、皆お代わりしてくれた。あの大きな鍋がすぐなくなった。
そしたらなんと、義母も自分から普通の醤油に加えてほんだしやニンニク醤油を買ってきてくれたり、「ラーメンレシピ」というおしゃれなレシピ本まで買ってきました。「AMIがいる間にもっと日本食を習いたい!とか、AMIの母や祖母のレシピも知りたい!」と言ってくれるようになりました。
わかめスープやお刺身、海苔を私たち夫婦が食べていた時には「それは食べれないわー」と笑っていましたが、それでも自分たちでこの料理作ってみたい!とか、コストコとかTraderJoesでこんなの見つけたの!と言って買ってきてくれるようになりました。
この変化には本当に驚き!2年前醤油さえ知らなかったんだよ。感動でした。
☝️ラーメンにレシピが!?なんだかとてもおしゃれラーメン本。
✅私もフラストレーションから相手の理解へ
最初は醤油も知られていないことに、驚き、ちょっとショックでした。
初来日の時の京都でも、もっと京料理やおばんざいなどを楽しんで欲しい!と思ったこともあった。
でも、これを読んでくださってるあなたのお父さんお母さんの世代、毎日外国の料理食べてますか、他国の調味料ご存知でしょうか。私の母はLunchTripの元とも言えるくらい世界各国の料理を楽しむのが好きだが、一般的な60代の友人はタイ料理も食べたことがない人がたくさんいる。母はいつも、友達を誘ってタイ料理とか韓国料理に行くらしいけれど、その友人に「初めて食べる!」と言われたことがよくあるそうです。
だからアメリカ人の60代夫婦が醤油を知らなかったとしても、私たちの親がヨーロッパの調味料をパッと答えらえるかという話です。
ちなみにシアトルシティ内には本当にたくさん日本料理屋さんやラーメン屋さんを目にしますが、郊外に出るとたまにスーパーの近くにSUSHIとか、KOREAN BBQ(焼肉は韓国式BBQと呼ばれてます)がある程度です。
今回の条件として、もともと義母が料理好き、アメリカ人にしては健康的な料理が好き、というのも良かった。あとは、私たちも押し付けすぎないようにしたのも、良かったかもしれません。
そうすると、認知度はこれくらいなんだなと客観的に認識できますね。
私が今まで接してきた外国人や、みなさんが一般的に街で会う外国人は、日本に興味がある人が多い、または基本20−30代と若い。そうすると、日本の食事について基本的なことはみんな知っているのが当たり前。知らなくても、試してみようというフレキシブルさがある。
でもそれは本当に社会の一部。私も、通訳案内士として日本を案内するときに、出張でたまたま今回会議の開催が日本だったから来たという人と、前から旅行したくて100万円かけて来たという人の違いは感じていました。
✅学び
・義父母との出会いを通じて、「特に日本に興味がない、どちらかというと食には保守的な60代に、新たな文化を浸透するのはなかなかハードルが高い」ことを学びました。(日本の田舎の60代を想像すれば良いことも。)
・日本食は世界の若者・都市部に広まったとは言いつつ、全域万能ではないことを改めて実感。イタリアンパスタほどの域までは行ってない。
・文化の浸透は、時間をかけて。相手にとって自分から興味を持ったわけじゃなく偶然だった場合、さらに時間がかかる。決して相手を推しすぎず、興味を持ってもらう機会を少しずつ作る。
💟おまけ:予想外の効果
私はヘルシーなものが好きと公言してるからか、日本料理は野菜が多いと思われているからか、野菜嫌いだった4歳の姪っ子が自分から野菜を食べるようになりました。嬉しい!
今、私彼女に謎にすごく憧れられてるので(幼稚園が開かないので友達がいない→私は英語がネイティブじゃないから同年代と思われてる説あり)、なんでも真似してくれます。
なのでこの機会に少なくとも野菜好きになってもらって、できれば日本食も好きになって欲しいなと思います!