4月の4カ国旅の途中。
ポルトガルの首都リスボンからファロに移動しようというとき、駅まではタクシーに乗ることにした。
つかまえた流しのタクシーの運転手さん、乗りこんだ直後はぶっきらぼうで、少し怖かった。
「日本人か??」と聞かれたのでそうだというと、「昔、マカオに住んでたときに日本にいったことある。広島と東京だ」と運転手のおっちゃん(運転手さん、というよりおっちゃんという言葉がぴったり)はいった。
タクシーのなかで私は、離れるリスボンをじっと見ていた。ここから1週間は(行く先々で人に会う予定はあるものの)移動は1人きり。
少し緊張していたので、5分くらい無言だった。
「なんでマカオに住んでたの?」
「宣教師していたんだよ。」おっちゃんは表情を変えずに言った。
わたしにとっては、宣教師から運転手ってすごく変わった経歴に思えたが、表情変えずに淡々というのがおもしろかった。
そうだった、マカオはポルトガルの占領地だった。
私先月いったばかりだったわ。
ぼろぼろになった教会の跡地にいってきた。2回目だけど。
カジノすぐ飽きて、金髪美女達のSexyダンスみてた。
マカオ:
「宣教師は休みがない。」
わたしがマカオのことを思い出してぼーっとしていると、おっちゃんは聞いてもないのにそういった。2度も。
で、だからポルトガルに帰ってきたの?と聞くと、
「まあ、そうだ。長い話になる。君はまだ若い。」
と渋い顔でお茶を濁した。
宣教師ってなんか神聖な印象なのに、なんかこのぶっきらぼうなおっちゃんとのミスマッチが面白くて、わたしは笑いそうになった。
そして、「日本人は好きだ。フレンドリーで、ポルトガル人と似てる」といった。
「おれの生まれはポルトガルの北部で、ポルトよりもっと北だよ。誰が来ても24時間いつでも受け入れ可能体制で、みんなすごくフレンドリーなんだ。日本もそんなかんじだな」
おっちゃんは、地元の話となるとぺらぺらと話し続けた。ポルトガル訛りの英語では、そのスピードは少し聞きづらかった。日本人、ポルトガル人ほどフレンドリーではないけど、でも確かに店員さんとか基本愛想いいからかな、とわたしは思っていた。
おっちゃんが上機嫌で話している間に、あっという間にファロ行きの駅に到着した。おっちゃんは最初と違ってだいぶ和らいだ表情でスーツケースをおろしてくれて、最後は、「いい旅しろよ!」と送り出してくれた。
同時に、わたしも「ここから移動は一人」の緊張がほぐれ、挨拶して駅へむかった。
元宣教師のタクシー運転手。
面白いなこの国、やっぱ。